インタビュー

2024.05.10

マイクロCTC検査で早期のがん発見につなげる~画像診断の精度を超えてスタンダードになる未来に期待~

『辻クリニック』 院長:辻 直樹氏

辻クリニックは、正常細胞を維持・再生する「細胞治療」によるアンチエイジング治療を行っています。アンチエイジングは見た目の美しさばかり考えられがちですが、辻クリニックが目的としているのは、尊厳+アイデンティティ+楽しみ=「DIP」を高めるアンチエイジングです。

患者さんは経営者、政治家、アスリート、芸能人が多くを占めています 。責任のある立場、代わりがきかないといった職業の方たちで、健康意識が高く、口コミで来院する人が多いそうです。2023年よりマイクロCTC検査を導入している辻 直樹院長にお話を聞きました。

辻クリニックの特色、治療方針についてお聞かせください

日本の医療では『命を守る』という言い方をしますが、海外の医療では尊厳やアイデンティティ、楽しむ、ということを命と同等に大切なものとして扱われます。そのため、人生を楽しむために必要な医療としてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が海外では重視されますが、日本では命を守ることを優先するあまり、QOLがおろそかになっていることが多く見受けられます。

加齢と共に低下していくのは、生命機能だけではありません。Energy(エネルギー感)、Visual(見た目)、Activity(活動性)も年齢に伴い低下し、この3つは「DIP」=Dignity(尊厳)+Identity(アイデンティティ)+Pleasure(楽しみ)に関わってきます。

アンチエイジング=美容というイメージが強いですが、当クリニックではDIPを維持、高めるための治療を行っています。

美と若々しさはイコールではないと私は思っています。若い頃に美容に高い関心が持てるのは、エネルギーにあふれてアクティビティが高いからで、病気になったり、身体のどこかが痛くなったりしてしまうと美容は二の次になる。エネルギー感や活動性、つまり元気であるということが見た目の美しさにも影響してくるということですね。

マイクロCTC検査を導入した理由についてお聞かせください。

我々の身体を構成する最小単位は「細胞」で、細胞が機能ごとに集まったものが10系統の「臓器」であり、臓器の集合体が「身体」です。老化や病気を制御しようと思ったら、細胞のレベルで見ないと根本的な解決にならないという発想が、私たちが行っている「細胞治療」です。

昔のがんは、乳がん以外は体を開かないとわからないものでしたが、画像診断で見えるようになり、MRI、PETとさらに細かく見えるようになってきました。しかし、検査で見える段階ではすでにその大きさまで進行しているがんです。

しかも、画像に何か怪しい影が映ったからといって画像だけでは確定診断とはなりません。そこからバイオプシー(生体検査)で調べないとがんとは確定できないのです。

細胞のレベルでがんの存在がわかれば、PET検査や生体検査を行う前に発見が可能になります。PET検査は被爆のリスクもありますが、身体へのリスクがない非侵襲性(生体を傷つけず、皮膚や身体に器具の挿入を必要としないこと)で、細胞の単位で見つけるというマイクロCTCは私のコンセプトにまさに合致しており、2023年5月の一般治療開始と同時に導入しました。

患者さんにはどのような形でマイクロCTC検査を勧めているのでしょうか。

マイクロCTC検査は希望する患者さんのみに受検してもらっています。実際に陽性が出た方も数名いらっしゃいました。けれどその後、画像診断しても何も出なかったんです。こうしたケースほど、なるべく早く発見することを重視している、私たちのような予防医療のクリニックの利点が活かされます。疑わしきは放置せず、副作用の少ない治療をすることができます。

予防医療のクリニックは、手術が必要となるステージのがん、末期がんの患者さんが対象ではないため、マイクロCTC検査で陽性でも、画像診断で何もない場合は非侵襲性の治療を行います。高濃度のビタミンCの点滴治療や、ごく少量のオプジーボといった、なるべく副作用がない治療を行い、マイクロCTC検査で陰性になるまで経過を観察します。

がんの怖さのひとつは副作用のない薬が存在しないということですが、ステージ2~4と大きくなったらやはり抗がん剤を使わざるを得ません。副作用も強くハイリスクハイリターンです。高濃度ビタミンCのような治療は超早期だからこそ有効なのです。

マイクロCTC検査で陰性であっても画像診断で見つかった場合は、血液検査、画像診断のどちらが不完全なのか、あるいは両方不完全なのかわからないですが、どちらが悪いのというのではなく、重要なのは早く発見しては早く治療するということです。

私たちがやろうとやっているのは予防であり、予防とは超早期治療ですが、私たちでダメだったら保険診療にきちんとバトンを渡すことが大事。保険診療と自由診療の病院は提携しながらの関係であるべきです。

保険診療というのは確定診断ですから、確定診断がつくまでは手を出せないというジレンマがあります。臓器に影がある、腫瘍マーカーだけが上がっている、PSA検査(前立腺がんを早期発見するための検査)でも疑わしい、けれどもがんが見つかっていないという場合、いずれも経過観察になってしまう。がんは早期発見、早期治療と言っておきながら、実際は早期じゃないということです。

画像にも映らない初期の段階で患者さんを守るのが私たちの治療で、例えれば自由診療が警備会社だとしたら、保険診療は警察。私たちは予防と超早期治療をやっている、いわば“事前治療”ですから、ここでダメだと判断された場合は、保険診療に速やかにバトンを渡すということです。

だからこそ、マイクロCTC検査にはどんな意義があるのか、保険診療にはまだ向いていない段階であるときにどうしたらよいのかということを患者さんにしっかり伝えることが非常に重要です。マイクロCTC検査費用は高額ですが、しっかりと患者さんに説明すれば、納得して受検していただけます。

マイクロCTC検査の今後の展開についてご意見があればお聞かせください。

マイクロCTCの他にも様々な遺伝子の検査があり、それぞれ一長一短があるので、私は特性を理解した上で、複合で使っています。マイクロCTC検査の場合、精度は高いですが、部位はわからないという短所もあります。しかし、私たちの細胞治療は部位に限らず細胞のレベルで見るので、短所とはならないことから使っています。

マイクロCTCのような非侵襲性の検査は、これから精度がさらに上がると思いますので、時代の流れでこれが主流になってくれば、診断基準が変わってくると期待しています。

今ではスタンダードとなったレントゲン検査もPET検査も、最初のころは患者さんに疑われていました。マイクロCTCも、現在はまだ『これで本当にがんがわかるのか?』と疑問を持っている患者さんもおられると思います。

しかし私は、将来的にはマイクロCTCのような血液検査が画像診断の精度を超えると考えています。検査の精度が上がりスタンダードになってくれば、患者さんの信頼度も上がり市民権を得られると思います。

がんは早期発見、治療が非常に重要。画像に出る前に確定診断がつくようになれば、超早期発見、早期治療につながりますので、さらなる精度の向上に期待しています。

【辻 直樹氏 プロフィール】

独協医科大学卒業後、東京女子医科大学病院救命救急センターを経て、同病院膠原病リウマチ痛風センター整形外科、同病院第二病院整形外科にてリウマチ科、整形外科、手の外科、スポーツ整形外科を経験。

現在、東京四ツ谷にて医療法人社団医献会 辻クリニックを開業。診療科目は「エイジングマネージメント」「水素治療」を行う。

また、水素治療に関しては、水素の抗酸化作用と抗炎症作用に注目し、アンチエイジング/予防治療への利用と、水素を使った鎮痛治療(ペインクリニック)を行っている。

2015年に「一般社団法人 臨床水素治療研究会」を立ち上げ、水素の臨床利用について研究を重ねている。

辻クリニック

https://tsuji-c.jp/ 

診療科は抗老化治療、筋骨格系治療、皮膚髪系治療で全科自由診療。
東京都千代田区麹町6丁目6−1 NAGAO BLDG. 8階 TEL:03-3221-2551